初版リリース 2024年03月01日
最終更新日 2024年04月21日
TDB13TB+W5-2143:スピーカーの製作
パワーアンプの自作をしてみたくなったのだが、使えるスピーカーが無い。
これまで使ってきたスピーカーはYAMAHAのAST-S1なのだが、これはAST方式(後にYST方式に改名)のスピーカーなので専用のアンプが必要になる。
自作アンプで鳴らせるスピーカーでは無い。
というわけで自作アンプを作るためにスピーカーを用意しなければならなくなった。
作るアンプは小出力のモノになりそうなので能率が高い方が良い。
AST-S1の代わりを務めるので低音もそこそこ出ないと不満だろう。
生活空間を圧迫する大きさでは使えない。
もちろん高価過ぎなのも困る。
【市販スピーカーの検討】
価格.comで調べるとKlipschという初めて聞くメーカーが高能率のスピーカーを出している。
上位モデルは能率98dBとか最近見たことがないような数字。
こいつはすごい、これ買えば解決。
と思ったが、
奥行きがかなり長くて今の生活空間には置けない。
置くだけなら置けなくはないが
バスレフポートが背面なので壁との距離を取らなければならない。
そんな置き場所は無い。
せめてバスレフポートが前面であったなら使えたんだけど。
利用してるユーザーの評価を見ると、実使用上の能率はスペックほど高くなく、3dB程度割り引いて見たほうが良さそうだ。
市販品には良さげなモノが無いので結局自作する事にした。
自分は電子回路屋なので音響・木工作と言う感じのスピーカー作りにはできればやりたくないのだが。
【過去の自作スピーカー①】
そう言いながらも過去に2回スピーカーを作ったことがある。
最初は1973年頃にパイオニアのPE-16を指定密閉箱に入れたものを作った。
改めて見るとユニットの特性は12KHzより高域がだら下がりだ。
(後述するFF165WKもこんな感じだ)
今の目線ではツイーターを追加したくなる。
自分で合板をノコギリ使って切った雑な箱で、ただ音が出るという代物だったと思う。
密閉型とは名ばかりで空気漏れスカスカだった。
当時はそれがダメだという知識もなかった。
【過去の自作スピーカー②】
1977年頃にフォステクスのFP203を指定バスレフ箱に入れたものを作った。
さすがにこの時は業者に図面を出してカットしてもらった。
気に入った音だったが経年劣化によりウレタンエッジがボロボロになっていった。
今でも使っているAST-S1を使い始めたので箱ごと廃棄した。
箱のサイズが大きかったので保管しておくのは無理だった。
今ならエッジを替えて使ったに違いない。
当時はエッジの張替えができるとは知らなかった。
もったいないことをした。
FP203はあまりにマイナーでどんな指定箱だったか資料が出てこない。
現行FF225WKの指定箱より大きかったと思う。
【自作スピーカーの検討】
自作で高能率といえばバックロードホーンだ。
オーディオ店で見たコーラルのバックロードホーンは垂涎だった。
改めて調べてみると、この形式でもしっかり低音が出るサイズになると結構大きい。
特に奥行きが大きい。
今の部屋に置けそうもない。
そうなると初心に戻ってバスレフか。
フォステクスのユニットを調べてみた。
FEシリーズの16cm、20cmユニットは完全にバックロードホーンに特化した特性になっている。
(いちおうFE166NV2、FE206NV2はバスレフにも対応となっていた)
バックロードホーンのエンクロージャーは大型で自室に置けないのでボツである。
FEシリーズ12cm以下のユニットはバスレフでも使えそうだが、能率が高くないので目的に合わない。
FFシリーズの16cm、20cmユニットはバスレフ用で箱が小型化できる。
FF165WKを見てみると
丁度よいバスレフ箱がフォステスクから出ていたが既に廃盤なので選択肢から外れる。
(後にコイズミ無線が同サイズのエンクロージャーキットを出している事に気づいたが)
特性を見ると、残念なほど高域が出ない。
箱に入れると11KHzあたりの落ち込みは目立たないらしいが、それにしてもだ。
ウーハー寄りの設計と言われていて、ツイーターを付ける前提みたいな特性だ。
実際のところ、今の私の耳では11KHz以上は聞こえない。
聞こえないからこれでも良いだろうという気にもなるが、気分的に嫌だった。
そんなこんなでフォステクス・フルレンジスピーカーは選択肢から外れた。
【TDB13TBを購入】
使えるスピーカーは無いのかと調べていると 飛びねこ さんのダブルバスレフエンクロージャーTDB13TBを見つけた。
バスレフよりも低域特性が伸びてバックロードホーンより小型にできる。
ユニットにはTangBandのW5-2143を使う。
単体の特性は結構フラット。
能率も90dB/Wで最低限はありそう。
ダブルバスレフエンクロージャーTDB13TBに入れた外観
TDB13TB×W5-2143の特性。
低域までカバーしている。
というわけで注文した。
注文から3週間ほどで到着。
なかなか美しい。
オガクズが結構な量出てきた。
気にしないことにする。
バスレフポートの奥には、はみ出した接着剤が見える。
見えないとこだから気にしない。
【塗装】
塗装が不要なぐらいの出来だが、塗装しないと汚れが染み込んだり日焼けしたりして表面の色合いが変わってくるので保護のために塗装を行う。
飛びねこさん推奨の塗料オスモカラーのノーマルクリアーを塗る。
やや厚塗り→乾いてから#1200で研磨→薄塗り→乾いてから#1200で研磨→薄塗り→薄塗りの4回塗り。
塗装前は木材?神棚?と言う質感だったが、仕上がると白木家具調の落ち着いた色合いとなった。
【調整】
飛びねこさん指定量の吸音材(145mm×250mm×25mm)を第1空気室に入れる。
入れすぎてはいけないと指示されている。
第2空気室にも吸音材が適量入っているらしいが見ることができないし調整もできない。
画びょう的なもので止める指定だがコードを利用して結束バンドで固定した。
スピーカーむき出しだと破損が怖いので共立電子のスピーカーガードを使ってみた。
予め分かっていたが穴の位置が数ミリ合わない。
針金のようなものなのでグイグイ曲げて合うようにした。
ピッタリにできた。
良い感じに仕上がったが扇風機のようである。
右は長年愛用しているYAMAHA AST-S1。
音を出してみる。
アンプはAST-S1とペアで長年使っているAST-A10。
一般スピーカー用のカートリッジAST-K01に変更して音を出す。
音は・・・・・なんだこれは?というぐらいビリつく音だ。
テストトーンで音出しすると片方のユニットだけ40Hzでビリビリ雑音が出る。
不良品か?とかなり焦る。
海外通販で購入したので、不良品だったら返品交換とかが厄介だ。
冷や汗ダラダラである。
しばらく40Hzを大音量で出し続けると・・・・・次第にビリつきは消えていった。
まるでボイスコイルのギャップに挟まっていたゴミが取れたとでも言う感じである。
良かった、あからさまな不良品ではなかったようだ。
音楽やテストトーンを流して24時間程度のエージングした後に再度試聴。
うーん音が硬い。
高音域が強くてキンキンする。
このままでは聴き疲れしてしまうので吸音材を増やしてみる。
天面②と片側面③を追加。
少し良くなった気はする。
更に増やすと、低音・中音・高音ともにスカスカのつまらない音になる、ような気がする。
なるほど面白い。
アンプよりも簡単に音の変化を楽しめる。
スピーカー作りがそれなりに人気なのがよく分かる。
ちょっと楽しいかも。
(いや、うまく行かなくて苦労してるんだが)
以上のように吸音材で調整してみたが、どうにもキンキンした音が収まらない。
ふと思いついてスピーカーにタオルを被せてみた。
なんと丁度良いサウンドになるではないですか。
タオルが出過ぎる中高音を押さえてくれるようだ。
だがタオルを常に被せておくと言うわけにも行くまい。
タオルとまでは行かないが何か前を軽く遮るものがあれば変化するだろうか。
サランネットとかパンチングメタルのグリルが効果ありそうである。
パンチングメタルのグリルに付け替えてた。
グリルの台座はネジ穴位置が合っていない。
ゴリゴリ加工してスピーカーに合わせた。
見た目が改善して更に良い感じである。
スピーカー保護の観点からもこの方が良い。
聴いてみたところキンキン具合がマイルドになった気はするが大した違いは無い。
もう少し変化を期待していたが、それほどではなかった。
グリルの方は変化が少ないように作ってるだろうから、そう期待されても困るだろうな。
グリルさんは良い仕事をしています。
改めて飛びねこさんが出しているTDB13TBの周波数特性を見てみる。
高域が10dB近く上がるハイ上がりな特性である。
キンキンした音で当然ですね。
これを見逃していた自分が悪い。
10dB差といえば音響エネルギーでは10倍差になる。
これを吸音材とかグリルで抑えようというのが到底無理な話であった。
(2024年4月21日追記)
このハイ上がりな特性は「バッフルステップ」の影響によるもの。
スピーカー単体とエンクロージャーだけでは対処は無理である。
大昔にスピーカーを作った経験だけで作り始めたスピーカーなので知識不足だったが後になってようやく理解した。
という訳で方針転換。
吸音材は飛びねこさん推奨の位置と量に戻す。
高音が出すぎる(キンキンする)のはトーンコントロールで調整する。
こんな時のためのトーンコントロールである。
以下のグラフは自作アンプのトーンコントロール特性である。
TREBLEを「-4」にすると10KHzが-9dB程になり聴いた感じも丁度よい。
トーンコントロールでの調整は最後の手段だが止むを得ない。
ところで一般的にオーディオマニアはトーンコントロールが音を悪くするものと思っている。
そもそもトーンコントロールが無いアンプを使っている場合が多い。
その場合はどうするんだろう。
(2024年4月21日修正)
調べたら
BSC(バッフルステップ補正回路、日本では長岡鉄男氏の影響でPST回路と呼ばれることが多い)で解決を図る例が見受けられる。
今回の場合は
1KHzより上を-6dB/octで落とすといい感じになりそうではある。
BSC回路とは要するにスピーカー端子とスピーカーの間に入れるLPF(ローパスフィルタ)である。
そういうのは使わないで
トーンコントロールで調整できればその方が楽だ。
(実際にはそんなに甘くはなくた話が先に続くのだが)
【試聴レポート:単音】
ようやく試聴レポートとなる。
単音を出してみる。
比較のためにAST-S1でも聴いてみる。
20Hz、25Hzは振動板が動いてもまるで音にならない。
この辺は音楽ソースにも殆ど無いので気にするほどでもないだろう。
比較のAST-S1だと風がブンブン出るがこちらも全く音になっていない。
30Hzから音が聴こえ始める。
あまり大きな音は出せないが、しっかりとした音として聞こえる。
比較のAST-S1だと音と同時に風がブンブン来て風切り音も聞こえるが、
あまり良い感じではない。
TDB13TB+W5-2143の方が上質な30Hzだ。
40Hz以上は余裕で出てくる。
AST-S1も同様。
公称データでは160Hzあたりに落ち込みがあり、聴いてるとそんな気もする。
この落ち込みは
ダブルバスレフ方式の弱点のようだ。
とは言っても音楽を聴いていて気になるものではない。
スピーカーの個性として受け入れるのが良かろう。
200Hz以上は普通に音が出る感じです。
以下↓に続きます。
TDB13TB+W5-2143:スピーカーの調整
TDB13TB+W5-2143:パッシブイコライザによるバッフルステップ補正
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