らじる★らじるとFM放送の音質を比較
最終更新日 2017年03月07日
初回リリース 2017年02月04日
NHKのネット配信「らじる★らじる」の音質をFPGA FMチューナーで受信するFM放送と比較してみました。
らじる★らじるのフォーマットはHE-AAC 48kbpsとされています。
私は以前、CD音源をMP3やWMAにエンコードし、どこまで圧縮して使い物になるかを聴き比べたことが有ります。
その時の結果では
なら問題なく利用可能、これ未満では劣化が分かりました。
私の耳はその程度のものです。
最新技術のHE-AACとはいえ、ビットレート48kbpsでは最初から勝負にならない気がするのですが、どんなものでしょうか。
FM放送はFPGA FMチューナー+フレッツ・テレビで、私の居住地域では最善の状態です。
一方のらじる★らじるですがradikoolを録音に使用しました。
番組表から簡単に録音予約ができて素晴らしいツールです。
私のAVT for FPGA
FM TUNERもかく有りたいのですが、全く手が回りません。
radikoolの録音は設定することで無劣化録音が可能です。
今回はこの方法で無劣化録音しました。
らじる★らじるを無劣化録音したサンプルを真空波動研で調べると
AAC 48.00kHz 2.0ch(2/0 L+R) HE(SBR) 48.00kb/s
Apple
iTunes AAC-LC Audio
となっています。
らじる★らじる では東京局と名古屋局の二つをサンプルにします。
なぜ二つかというと、東京局→名古屋局の伝送系での劣化が予想されるからです。
伝送系で使われるデジタル回線は384kbps(エラー検出ビットを除くと実質352kbps)しかありません。
更に音声信号の14KHz以上に制御信号を載せてくるという劣悪なことをやっています。
図にするとこんな感じ。
NHK東京局
↓
↓→ FM変調 −−−→ FM放送(東京)
↓→ HE-AAC 48kbps →らじる★らじる東京
↓
14KHz以上をカット
↓
14KHz以上に制御信号を挿入
↓
A/D変換384kbps(実質352kbps)
↓
中継回線
↓
D/A変換
↓
14KHz以上をカット(制御信号を除去)
↓
↓→ HE-AAC
48kbps →らじる★らじる名古屋
↓
FM変調
↓
FM放送(静岡)
↓
電波
↓
受信
↓
電波→光変換
↓
光ケーブル(フレッツ・テレビ)
↓
光→電波変換
↓
自宅のチューナーで受信
らじる★らじる名古屋や私の自宅での受信までには嫌になるほどの音質劣化要因が並んでいます。
さて、比較用のデータですが、条件を揃えるために以下の工程を踏みました。
ノーマライズとサンプリング周波数変換にはwaveconvというツールを使用しています。
これらの工程は劣化が最小限で行われるので、ほぼ聞き分けられません。
録音した比較サンプルは3つ用意しました。
サンプル1 最後の私 阿部真央 2017/2/3
ON AIR
サンプル2 同じ空の下 高橋優 2017/2/3
ON AIR
サンプル3 ポロネーズ
変イ長調 作品53“英雄”(ピアノ)レイフ・オヴェ・アンスネス 2017/2/3
ON AIR
それぞれ、FM放送(静岡)、らじる★らじる東京、らじる★らじる名古屋 の順です。
まずは無音時ノイズの比較。
FM放送(静岡)
らじる★らじる 東京
らじる★らじる 名古屋
らじる★らじる東京の圧勝です。
FM放送(静岡)はノイズが大きいです。
らじる★らじる名古屋はデジタル伝送系の貧弱さが災いしてか東京より劣化しています。
次に時報の880Hzを比較したかったのですが、らじる★らじるでは時報がカットされていて測定不能でした。
ネット配信では遅延が発生しうるので正確が求められる時報は流せないのでしょう。
次は楽曲が流れてる最中のスペクトラム比較
FM放送(静岡)
らじる★らじる 東京
らじる★らじる 名古屋
14.2KHzに白点線のマーカーを置いていますが、FM放送(静岡)とらじる★らじる名古屋では14KHz以上がカットされているのがわかります。
らじる★らじる東京は14KHz以上の信号が出ています。
らじる★らじるは48kbpsというビットレートとしては信じられないほど高域まで信号が出ていました。
では実際聞いた感じです。
最初は取り消し線引いた部分の感想だったのですが、らじる★らじるをしばらく使って印象が変わったので訂正します。
この比較を試みた趣旨は、FPGA FMチューナーにフレッツ・テレビだスゲーだろ、最高だね、らじる★らじるなんて足元にも及ばんわぁぁぁぁ!!
と優越感に浸りたかったからなのですが、なんて事でしょう、らじる★らじるの方が上質に聞こえるんですけど・・・・・
しかもm4aファイルで無劣化録音すればFM放送をPCM録音するのに比べて1/30〜1/50のファイルサイズで済んでしまいます。
色々苦労してFM受信の改善を図ってきたのにネット配信に負けるなんて。
見事な返り討ちを受けて、ずいぶんなショックを受けています。
世間の評判以上にらじる★らじるのレベルは高いんじゃないでしょうか。
これに勝てる可能性があるとすれば伝送系の劣化が無い東京局をノイズレス・マルチパスレスで受信できて、超高級チューナーを利用している一部の特権階級だけだと思います。
それにしても、らじる★らじるの評判がイマイチなのは何故でしょう?
思い付く理由としては、
こんなところでしょうか。
CD音源をHE-AAC 48kbpsにエンコードして聞いてみると実用的な音を聞かせてくれます。
十分ではないにせよ、このフォーマットは相当な実力を持っています。
フォーマットに不満があっても、自宅で受信するFM放送よりもマシな音を出してくれるなら先入観抜きで使うべきでしょう。
この結果により私の中ではFMチューナーの時代が完全に終わりました。
寂しいですが、いろんな煩わしさから断捨離が出来てホッとしたような気もします。
それでも古いチューナーで昔のままに昔の音を聞くのも良いかもしれません。
まあ趣味ですから。
らじる★らじる、結構良いじゃないか思われましたが、おとなしすぎることに不安を感じます。
これは、音が間引かれてるからなのか、劣化してるに違いないという先入観からなのか、FM放送がアナログ的な歪の影響で賑やかに聞こえるからなのか。
FM放送とらじる★らじるの比較では、違いの分かる曲がうまく見つけられなかったので、別の手段を取りました。
CD音源をHE-AAC
48kbpsでエンコードして、どのくらい劣化するかの確認です。
HE-AAC 48kbpsは、なかなか優秀で、多くの曲は結構まともに聞こえます。
そんな私の堕耳でも、こりゃ劣化してるなと分かるサンプルが得られました。
HE-AACが欠点を出しやすい音源でしょう。
サンプル4 ワンダーステラ fhána
元WAV(CDからリッピング)
HE-AAC 48kbps neroエンコーダ
HE-AAC 48kbps FDKエンコーダ
HE-AAC v2 48kbps neroエンコーダ
HE-AAC v2 48kbps FDKエンコーダ
neroエンコーダーではヴォーカルにビブラートが掛かり、リズムの「シャン・シャン」が所々で変です。
FDKエンコーダの方が優秀で、私の耳では許せる範囲です。
FM放送も音源より劣化してるわけだし、どちらがマシかという問題になります。
HE-AAC
48kbpsがそこそこの実力があることは確認できました。
HE-AAC v2 48kbpsは、ついでに作ったオマケです。
らじる★らじる、ではなく民放のradikoで使われてる形式です。
nero v2ではステレオ感が変ですが、FDK
v2は気にならない。
つまるところ、HE-AACの音質はエンコーダーの質次第のようです。
サンプル4でHE-AACの苦手そうな所が分かったので録音済みのファイルから比較できる所を探し出しました。
サンプル5 私はピアノ 高田みづえ 2017/2/16 ON AIR
FM放送(静岡)
らじる★らじる東京
らじる★らじるは「ギュイーン・ギュイーン」と鳴ってる楽器の音が時々弱くなっています。
(楽器に詳しくなくて稚拙な表現ですみません)
これは確かに圧縮のせいですね、と分かる部分です。
現状では受信状態さえ良ければFM放送がベターだなと思えます。
ただ、受信状態が悪い人は無理してFM放送の受信環境を改善するより、らじる★らじるで妥協ししても良いかもしれません
将来は
サンプル4で見た通り、エンコーダーの改善で更に改善される可能性は有ると思います。
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